Saturday, November 30, 2013

#13-2 Pinhoti 100 20:30:03

2013/10/9 Tokyo/Japan

Pinhoti 100マイルの約3週間前のこと。脚に激痛が走り、道路の上で仰向けになっている自分がいた。自転車に乗っている最中に、突然飛び出してきた人を避けようとして転倒。右脚を肉離れ&打撲をしてしまった。幸い相手には怪我はなく、それだけは救われた。ただ自分には4日後にハセツネのチーム戦を控えていた。何でこんな事になってしまったのか、物凄く悔しく、チームメイトには申し訳ない気持ちで一杯だった。

正直、脚を引きずってでも出ようか物凄く悩んだ。でも、そんな事をしてもチームメイトは喜んでくれるはずもない。決断はDNS。

過ぎた時間は取り戻せない。だったら今やれる事をとことんやろう。もちろんハセツネに対する悔しさはハセツネでしか返せないんだけど、次に控えていたPinhoti100が今年の俺にとってのハセツネだ!そう気持ちを切替えてから、レース直前までとにかく針と治療に専念した。

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2013/11/1 Birmingham/Alabama

21:30 Birmingham空港に到着。Hertz Rentacarをして、Sylacauga にあるQuality Innにcheck-in。程よい感じに何もない街で結構不便。

3週間治療をしながら考えたこと。もしPinhoti100までに走れる状態まで持っていけたら、今回の100マイルに対する自分の目標やタスクって何だろうか。自分には夢がある。100マイルを100回走ること。あと残り80回以上走っていく中で、今回のように怪我からの〜とか、トレーニング不十分からの〜とか、色々と完璧ではない状態からの挑戦って必ずしも出てくるだろう。そう考えたら、今回自分がこのような状況で走る意味って物凄く意味合いが出てきた。リスクより可能性の方が遥かに大きく感じた。

脚は80%位の完治具合。正直どこかしら不安な気持ちを抱え、後には引けない気持ちを抑え、Alabamaへ勢いで来てしまった部分はある。レース前日にベッドの上で仰向けになりながら様々な不安な気持ちが募る。自分にはDNFという選択肢はない。でも本気で完走出来なかったらどうしよう?レース中に脚が悪化して走れなくなったらどうしよう?一生走れない脚になってしまったらどうしよう?何だか頭の指令に対して身体が拒否反応をしてる感じ。

今回、直前まで気に掛けてくれたISOさんに一本の電話をしてみた。会話は今回の事や他愛もない会話をして電話を切った。最終判断は電話を切った後に6マイル走って、ひどい違和感が出なければレースに出る事で一致。そして6マイル走った。感じは意外と快調だった。ここで出走をする決意する。それでもやっぱり一番後押しをしてくれたのはISOさんから頂いたこんなメッセージだった。「決めたら最後まで貫くべし。応援してます。骨は拾います。泥臭さ、みせてください、and ENJOY!」

骨を拾います、、レースは一人で走るんだけど、なんだか一人で走るような気がしなかった。

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-Course Profile-



-Aid Stations-
0.0:   Heflin
6.7:   High Rock
13.3: Shoal Creek
18.3: Horseblock
22.7: Hwy 431
27.7: Lake Morgan (drop bag)
34.6: Blue Mountain
40.9: Bald Rock
45.3: Silent Trail 
52.1: Hubbard Creek
55.3: Adams Gap (drop bag)
60.3: Clairmont Gap
65.4: Chandler Springs
68.8: Porters Gap (drop bag)
74.5: The Pinnacle 
79.5: Power Line
86.6: Bulls Gap
89.6: Rocky Mtn Church
95.2: Watershed
100.6: Sylacauga 

-Wear/Gear-
Cap: Hunger Knock
Top: Pat Cap1
Inner: Fine track
Bottom: Pat Surf shorts
Socks: Drymax
Shoes: HOKA Bondai
Watch: Suunto Ambit
Pack: Advanced Skin
Light: Zentos Delta Peak DPX-233H, Zentos 閃 SG-329
Running Stick: Rumblur Stick
Taping: New Hale

-Food-
Hammer Gel: Provided at aid stations
Boost: Top Speed
Hydration: Water
Soup: provided at aid stations

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-Race-

2013/11/2 Sylacauga - Heflin(0M) 
4:00am ゴール地点のSylacaugaからバスに揺られること1時間半、スタート地点のHeflinに到着した。結構寒く、用意されていた焚き火を選手で囲む。

2013/11/2 Heflin(0M) - Shoal Creek(13.3M)  Position: 54
6:00am Heflinを約250人のランナーがスタート。コースが直ぐにシングルトラックになり、渋滞を避けるため50人くらいが急いで先行く。自分は焦ることなく、とにかくマイペースを心掛ける。久しぶりに走るトレイルを楽しみながら、怪我したアンディと一歩一歩対話しながら進む。ちなみにアンディとは自分の右脚の事、左はマイク。High Rock(6.7)まではライトはON。後ろから迫ってくる選手がいれば、すぐにトレイルを譲ってとにかくマイペース。

Shoal Creek手前くらいから辺りも明るくなり、今までに見たことのない素晴らしい紅葉が目の前に広がる。本当に宝石箱を見ているようだった。"OMG, this sene is outstanding!!" このとき前を走るBritish Columbiaから来たDaveと景色の素晴らしさに盛り上がりながら会話が弾む。Daveとは互いに共通の友達がいたり、来年H.U.R.Tでも会えることで、話が更に盛り上がった。この時点で順位は54位。

2013/11/2 Shoal Creek(13.3M) - Lake Morgan(27.7M)  Position: 54 -> 34
Shoal Creekに着くとFacebookで知り合ったJoe Fejes (アメリカ24時間走代表選手)が声を掛けてくれた。"Hey, great to see you at last! Keep it up!" 実際に会うのは初めてで、写真で見る厳つい感じはそのままだった。この日Joeは友達をAdams GapからPacerする模様。

Lake Morganまではとにかく普段の60%くらいの感覚で抑えていくことが今回の作戦。その先は正直アンディがどうゆう状態になるのか想像すら出来なかったから、その時はその時になったら考えようと思う程度。ASではGelをもらう以外にほとんどストップしないから、ペースを抑えていながらも順位は少しづつ上がる。でも頭の中では、もし怪我をしていなかったらどうだったんだろうかと、思い描いていた理想と今の現実が交差する。Lake Morganに着くと再びJoeとその友達のHannaが応援してくれた。この時点で順位は34位。ペースをもう少し上げたいけど、ここはグッと我慢。

2013/11/2 Lake Morgan(27.7M) - Bald Rock(40.9M)  Position: 34 -> 24
Lake Morganから先にはコース最高峰のBald Rockが控えている事と大きめのアップダウンが連続するため、作戦通りランブラースティックをピックアップ。このスティックは脚への負担軽減以外にランブラーさんお手製の気持ちの入った代物だから力もくれる。自分の場合、スティックを使うと走ってるペースより若干ペースは遅くなるけど、今の自分のパフォーマンスや状態にはちょうどいい。登りはガンガン使って、下りと平坦は持ちながら走る。

Bald Rockの登りの途中で2012年Chimera100で一緒になったNickを交わす。"How is it going Nick? Not too bad. Keep it up, Good luck!" 登りは普段であれば走れるような傾斜具合なんだけど、ここは抑えてパワーハイク。Bald Rock山頂に着くとAlabamaの大自然を見渡せる素晴らしい景色が広がる。天気も良いし最高の展望だった。

ペースはだいぶ抑えてきたけど、レース前はトレーニングどころか治療だけに専念してきたから、ここまで40Mileも走れば脚もだいぶ重くなってきた。この時点で順位は24位。

Bald Rock(40.9M) - Adams Gap(55.3M)  Position: 24 -> 18
Bald Rockはクルーやペーサーが沢山いて、とても賑やかなASだった。ついてすぐに恒例の腕立てをしたら会場が盛り上がった。なので腹筋もしてあげた。"What's your name? Are you the guy from Japan? Yes, my name is Tomo!" ここからAlabamaで無名だった自分の名前が少しづつ認知されるようになる。

Bald Rockからの下りはかなり急で岩がゴロゴロしていた。ここは捻挫要注意ゆっくり下山。途中ミスコースをしそうになったけど、後方からきたKristinaという女子選手に "Hey! Wrong way!!" と呼び止められ運良くコースに復帰。ここからKristinaに引っ張られ、引っ張りながらHubbard Creek(52.1M)まで進む。Hubbard Creekから脚の具合がかなり重くなってきたから入浴できる川があればジャブジャブ入ってアイシング&リフレッシュ。SFMT同様にリバーアイシングすると一時的に調子が上がる。この時点で順位は18位。

Adams Gap(55.3M) - Chandler Springs(65.4M)Position: 18 -> 17
Adams Gapからはペーサーをつける選手が多く、このASも盛り上がって賑やかだった。ASに到着するとすぐに自分の名前が所々から呼ばれる。"Tomo! Woohoo! Show me your push ups!" ここは腕立てと腹筋で期待に応える。

ここから先はナイトランに突入するためヘッデンON。補給もChicken Noodle Soupをしっかり4杯頂く。ASを出ると走れる林道が永遠と続く。普段で有れば好きな展開なんだけど、トレーニング不足の体には走れる区間だけあって辛い。Clairmont Gap(60.3M)を過ぎた辺りでKristinaを交わす。前半に軽快だった足取りも、ここにきて結構重そうだ。"You're doing great, Keep it up!" 

Chandler Springs(65.4M) に着いて直ぐに屈伸をしたり、ストレッチをしてみたり、入念にアンディのご機嫌を伺う。ここまで60マイル走ってきてアンディの調子は良くはなることはなく、でもそんなにも悪化はしていない。スタートから常にアンディが何時悪化して爆発しまうのか相当な不安を抱えてきたけど、ここで初めてホッとした。ここで決める。一か八かだけど、ここから勝負をしよう。この時順位は17位。

Chandler Springs(65.4M) - The Pinnacle(74.5M)  Position: 17 -> 11
Chandler Springsを出て一気にペースを上げた。勝負をしようと決めてから、一気に体が軽くなる。100マイルを走ると長い短いは別として、必ずこの感覚、この瞬間って、訪れる。浮き沈みの連続の中で沈んだ後には必ず追い風が吹く。止まっているように見える選手を一人一人交わし、順位をカウントアップしていく時がたまらなく楽しい。

Porters Gap(68.8M)のDrop bagポイントに着き、更にペースを上げる作戦に変更するため、ランブラースティックをここに置いて行く。今こうやって脚が残った状態で走れるのもランブラースティックのおかげ。友よThanks! こうなったら自分のモチベーションといえば、目の前に見えたライトの明かりのみ。明かりが見えたらスイッチが入る。流石にここまでの順位に来ると選手も手強くなる。交わした選手に再び抜かれると今度は自分への気持ちのダメージが大きい。交わす時の判断や瞬間は体中一気に緊張が走る。

The Pinnacle手前の大きな登りでペーサー付き選手を4組交わす。抜く瞬間は選手やペーサーに、こいつ後どんだけ脚が残っているのか探られるようにジロジロ見られ、話し掛けられる。"How is it going? Not to bad, trying to pace up from here. Oh well, Good luck!" 後半になってペーサーの存在がどんだけ計り知れないか知っているだけにペーサーが羨ましく思える。

The Pinnacle(74.5M) - Bulls Gap(85.6M) Position: 11
PinnacleのASまで下る手前の緩やかな上りの林道で飛ばしたツケが回ってきた。充分な補給を時間刻みで摂ってきたけど足りてなかったのかもしれない。フラフラになりながら戦意が一気に喪失する。「俺、何のために走ってたっけ?ここまで来たらもうそんなに頑張らなくてもイイでしょ。ここに布団があれば絶対に即寝だろうな〜 」何かとこれ以上頑張らないための言い訳が次々と出てくる。俺って何時も気持ち気持ちとか言うけど意外と気持ちが弱いんだな。

でもこんな時は補給を摂り、トレイル脇でしばらく目をふさいで休む。自分はやる気やモチベーションが無くなると必ずこれをやる。しばらくすると完全復活までは行かないけど動けるようになる。とぼとぼ歩きから、ゆっくり走り始める。Pinnacleに着くと周りから腕立てはやらないのかと声が掛かる。"We are all waiting for your push up!" そう言えば忘れていたので、すかさず腕立て。この時順位は変わらず11位。

Bulls Gap(85.6M) - Sylacauga(100.6M)  Position: 11 -> 9
今回10以内に入ると仲間に言った手前、何とか入りたい。でも一番は自分が入りたいから。残り5マイルで一刻とレースが終わりに差し掛かる。でも最後の最後まで諦めたくない。ここで諦めたら次からもそんな事を考えてしまうだろう。だから諦めない。最後の林道を無我夢中に走る。心の中で「いはらともかずたれ!DMJたれ!たれ!たれ!、、、」永遠と繰り返す。

先ほどペースを落としてるから後ろの存在も気になる。見えないライトの気配を感じながら走る。残り4マイル残したところで遂に前方にライトの明かりが見えた!あちらも自分の存在に気付き一気にペースアップする。どこからか Round one, fight!! と聞こえてきた気がする。ロックオンした選手を追うばかりにミスコースをしてしまう。相手も同じで自分から逃げる事で標識を見過ごしてしまったようだ。一緒にトレイルを戻って標識を探す。標識が見つかったところで、どこからか Round two, fight!! と聞こえてきた気がする。ペースを徐々に上げ、相手の出方を見るも、体力が残っていないようで千切れてくれた。順位が10位になる。

しばらくハイペースで進んでいると今度はライトが二つ見えた。ペーサーと選手のようだ。でも心の中では、もうさっき飛ばしたから体力余ってないよと思っていたところでRound three fight!! と聞こえてきた気がする。選手の足取りがかなり重そうだったから一安心して、一気に抜きにかかる。抜く瞬間に選手に声を掛けられる。"Wow! Your lazing fast!! Where do you come from? Japan, See you later at the finish!" そして9位になる。

最後の最後にこんな展開が待ってるとは思いもしなかったから、心の中で雄叫びを上げる!すると再びライトが前方に見えた。いやいやもう無理ムリ!と思ったところで Round four, fight!! と聞こえてきた気がする。相手が立ち止まっていたところで一気に抜きに掛かる。何してたんだ彼は?ライトの電池交換?立ちション?まっ、いいや。すると直ぐに相手のライトが追ってきた。ライトが迫る度にこちらもペースアップ。自分がルパンで相手が銭形みたいな展開が続く。もう口から心臓が飛び出しそうだ。しばらく頑張ると相手の明るいライトが徐々に薄れてきた。でも今度は自分が痛恨のミスコースをしてしまう。再びコースに戻るも完全にトモピタされる。ついに自分の心が折れたところで道を譲る。

トレイルが終わり、ラスト2マイルくらい薄暗い住宅街を走ったらゴール。ヘッドライトを消して忍者作戦。最後の力を振り絞って追う。差はたったの70Mくらい。相手もヘッドライトを消した。二人とも忍者になった。それでも満月の月明かりが薄っすら相手の姿を見せる。が、なかなか縮まらない。そうこうしてるうちにゴールの陸上トラックが見えた。トラックに入って半周すればゴール。相手との差は100M。もう逆転劇がないと解ってからペースを落とす。正直悔しさは微塵も無かった。というか全てを出し切れたから清々しかった。ずっと辿り着きたかったゴール。タイムは20:30:03、ゴールを越えて8位の選手と健闘を称え合う。"I thought you were gonna get me. Almost, but not. What's your name? Jeff. My name is Tomo. Congratulations with your finish! You too! Now, let's get a nice hot bath and a really cold beer. Yes, for sure!"

End

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-Photos-






















Provided by Jonathan & Tomo

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-Notes-

100マイルは距離が長いけど、今回のようにラスト5マイルの勝負のために95マイルも走る展開があるんだと。100マイルも短距離走と同じように1秒1秒こだわり続ければ何かが起きる。起きなかったとしても、これはこれで自分が究極に出し切れた喜びにも繋がると思う。人に勝ったり、順位が良くても、己に勝てなかったら、何処かしら心残りってあると思う。自分が頑張ったか、頑張らなかったかは客観的に見ればそこには答えがあるかもしれない。でも本当の真実は常に自分の頭の中にしかないと思う。これからも常に対戦相手は自分の中に潜む真実のみ。

ウルトラってスポーツに魅せられながら、自分にとって100マイルって、自分という人間を磨く上でもっとも最適な場所なのかもしれない。これからも更に自分を追求していきたい。


-100 Miler Tomo